2006

パドレイグ・ハリントンの勇気の一打
2006年大会最終日

2006年大会は大会3連覇を狙う米ツアー賞金王のタイガー・ウッズと欧州ツアー賞金王パドレイグ・ハリントンとのまさに一騎打ちだった。初日をともに3アンダーの3位タイでスタートすると、2日目に通算8アンダーでタイガーが首位に立ち、パリントンは1打差の2位。3日目に通算6アンダーで二人が首位に並ぶと、最終日もともに67のラウンドで通算9アンダー、互いに譲ることはなかった。そして迎えたプレーオフ。18番ホールの繰り返しで行われた1ホール目はともに3オン1パットのバーディ。そして2ホール目を迎える。ハリントンのティーショットは大きく左に曲がり、落ちた場所は林の中のベアグラウンドというまさに最悪の場所だった。フェアウェイに出そうにも、すぐ前方には2本の木があり、絡み合う幹と幹で隙間などはない。しかしここでハリントンが、その2本の木をめがけてユーティリティアイアンを持ちアドレスを取ったのだ。ターゲットはわずかに見える50cmの隙間だけ。失敗する確率が遙かに高く、下手をすれば木に跳ね返ったボールが自分めがけて飛んでくる恐れもある。しかしハリントンが動じることはなかった。「可能性があるなら勇気を出してみよう。なんせ相手はあのタイガーなんだから。自分に出来ることをやってみなくちゃという気持ちだったんです」迷いなく振り抜いたショットは、わずか50cmの隙間をこじ開けるように飛んだ。わずかに木をかすめたため思ったより距離は出なかったが、それでも119ヤード先のラフまで飛んだ。勇気の一打は運をも味方にしたのだ。残り96ヤードの3打目は深いラフだったが、ギャラリーが歩いたことによって踏みしめられており、それほど悪いライではなかった。ハリントンはそこからの第3打をピン奥1.5mに着地させるとバックスピンで戻して50cmの距離につけバーディ。対するタイガーは3オン2パットのパーで決着。絶体絶命のピンチから勇気の一打で勝利をもぎ取ったハリントンは、翌年から全英オープンを2連覇、さらに全米プロゴルフ選手権でも優勝と大きくブレイク、ダンロップフェニックスでのタイガーとの死闘が彼を成長させたと言えるだろう。