1981

セベ・バレステロス、優勝をたぐり寄せたスーパーショット
1981年大会最終日

12番ティーの時点でトップのセベ・バレステロスと2位の中嶋常幸との差はわずかに1打、どちらが勝ってもおかしくない状況だった。そんなプレッシャーがかかる中で打ったセベのティーショットは左松林の中に消えてしまった。ボールの地点に行ってみると、わずかに空いているのは右前方にある二本松の間だけ。グリーン右サイドにはOBラインが迫り、右手前にはバンカーが待ち受けていて、普通に打てばこのどちらかに捕まるのは必至という状況だ。対する中嶋はセカンドショットを3mのバーディチャンスにつけていた。残り183メートル、逃げるか、攻めるか…。スペイン人特有の熱き血を持つ男は、ためらうことなく後者を選んだ。クラブをインサイドに引き、インパクトで右肩を突っ込みながら素早く手首を返す。5番アイアンでフックをかけたボールは見事グリーンを捉えていた。「あれが勝利に繋がった。失敗していたら中嶋に負けていたかもしれない」とホールアウト後に振り返った一打だった。このチャレンジ精神こそがセベの信条であり、またそれが出来るのが世界のスーパースターでもあるのだ。「今年最高のショット、100回やっても同じように打つ自信はない」と言わしめた価値ある一打でセベは1977年に続く大会2勝目を挙げた。