1985

中嶋常幸、優勝を決めた奇跡のイーグル
1985年大会最終日

「この大会は来る年も来る年も外人がタイトルを持って行く。そのたびに俺は何をやっているんだ、全然何もしていないんじゃないかと自己嫌悪になって落ち込んで…でもいつかはやってやろうと狙っているんだ」そう中嶋は大会前に話をしていた。1981年大会では途中までセベ・バレステロスとデッドヒートを繰り広げていたが、最後は逃げ切られてしまった。そんな中嶋に打倒セベのチャンスが巡ってきた。通算11アンダー、2位のセベに2打差をつけて最終日を迎えたのだ。迎えた13番ホール。中嶋の第2打は残り54メートル。「今一番自信があるクラブがサンドウェッジなんだ」という伝家の宝刀から放たれたボールはまっすぐピンに向かい、3バウンドしてカップに吸い込まれた。大歓声に包まれる中、中嶋は少しうつむきながらグリーンに上がり、拾い上げたボールにキスをして見せた。「ピン手前に落とせば、と思っていたが完璧なショットだった。あれで勝ったと思ったね」 セベは6mを外し、陳志忠は60センチが入らなかった。その後セベは気落ちしたのか14番から3連続ボギー、中嶋常幸が見事日本人初のチャンピオンに輝いた奇跡の一打だった。 ちなみにこのホールで最初のイーグルを記録したのは1975年大会での青木功だ。