2000年大会当時の話になるが、パワーのある選手はロングアイアンをうまく使いこなす…これが定石だった。しかし片山は「僕みたいに背が低く、ヘッドスピードがなくて球が上がらない人間にはグリーンで球を止められない」。もともと1番、3番、5番、7番と4本のウッドをバッグに入れていたが、10月末のフィリップモリスから4番アイアンを抜いて代わりに9番ウッドを入れるようにしていた。6番ホールは200ヤードのパー3。誰もがロングアイアンを抜くこのホールで片山は迷うことなく9番ウッドを握った。「下り斜面のピン右3メートル。今日あそこにつけたのは、もしかしたら僕だけかもしれない。完璧でした。いつもの4番アイアンでは絶対あそこに止められなかった」このホールで見事にバーディを決めてみせた。きっかけは8月に参戦した全米プロゴルフ選手権だった。世界の強豪達を見回すと9番ウッドを抵抗なく使いこなす選手がいた。それを見てテレビ観戦をした4月のマスターズでスウェーデンのイェスパー・パーネビックが9番ウッドを使って好成績をあげていたことを思い出した。帰国後すぐに片山は用具の契約メーカーに9番ウッドを注文している。最終日に優勝争いを繰り広げた同組のボブ・メイも「彼は僕が見てきた中で、最もフェアウェーウッドがうまい選手だと思う」と絶賛した。片山が日本人3人目のチャンピオンを確信した15番ホールの第2打、ピンまで4mにつけたショットもまた9番ウッドだった。「これで短所が長所に変わった。良いものは抵抗なく取り入れる…そのことについて、周囲になんと言われようと構わない」この姿勢が片山を永久シード選手にまで押し上げた最大の要因だ。